不動産クラウドファンディングTSON の中間決算書の財務分析最終回です。第1回・第2回に引き続き、今回はキャッシュ・フロー計算書を読み解いていきます。
繰り返しますが、財務分析はド素人です。投資は各人の判断でお願いします。
▼貸借対照表編・損益計算書編の記事はこちら
中間キャッシュ・フロー計算書について
そもそもキャッシュ・フロー計算書を見る意味は?
貸借対照表や損益計算書は、元を辿れば中世ヨーロッパの商人がつけていた帳簿に由来し、会社の財務状況を見るのに役立つというのは古くから知られた話です。一方で、キャッシュ・フロー計算書は、2000年3月期から上場企業で作成が義務づけられた、比較的新しい計算書です。
違いをざっくり説明すると、以下のとおりです。
損益計算書:期間中の活動で、会社の資産(お金+もの)がどれだけ増加したかがわかる
キャッシュ・フロー計算書:期間中の活動で、会社のお金がどれだけ増加したかわかる
事業を行うに当たって、売上を上げることはもちろん重要です。しかし、売上ばかり気にして売掛金(ツケ)を回収できていないと、事業のために借りたお金を返すための現金が枯渇し、経営に行き詰ってしまいます。このような事態を把握するために「売上や利益がどの程度あるかは損益計算書」「事業に必要な現金が足りているかはCF計算書」というように、使い分ける必要があるようです。
日本でCF計算書が2000年ごろから義務付けられた背景には、デフレが関係しているそうです。デフレ下においては「もの」の価値が下がりやすく、不動産等「もの」としての資産がどの程度あるかよりも、「現金」がどの程度あるのか(あるいはどのように動いたか)が重要であるため、今日ではCF計算書の重要性が増しているとのことでした。
詳しくはこちらの本で解説されています。
決算書はここだけ読め! キャッシュ・フロー計算書編 (講談社現代新書)
3種類のキャッシュ・フローの違いは?
キャッシュ・フロー計算書をみると、営業活動によるキャッシュフロー・投資活動によるキャッシュフロー・財務活動によるキャッシュフローの3種類があります。それぞれの意味とTSONの計算書の内容を読み解いていきます。
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュフロー(以下営業CF)は、企業が利益を得るため一年間(今回は半年)に行った活動で得た現金収入です。そのため営業CFはプラスになるのが望ましい状態です。
TSONの営業CFはマイナスです。前回値と比べても△4.9億円→△10.1億円とマイナスが拡大しており、芳しくない結果のように思います。
ここで疑問が一つ。「前回分析した中間損益計算書では黒字だったはずでは…?」
上の営業CF表を確認すると、赤枠で囲った「期間中の純利益(55,029千円)」は損益計算書のとおりプラスですが、そこに営業活動で得たキャッシュ・出ていったキャッシュを順に加えていくと、出ていったキャッシュが多いことが分かります。
とくに青枠で囲った「棚卸資産の増加(-171,807千円)」「前受金の減少(-620,793千円)」などの項目が大きくキャッシュを減らしています。用語の意味を調べたところ、棚卸資産≒在庫であり、在庫(つまり物)が増えて現金が減少したために、期間内の現金の動きとしてはマイナスになったことが分かります。損益計算書では在庫(つまり物)が増えた場合には、資産が増えたためにプラスでカウントされるので、逆の動きになります。
現金だけに注目するか、資産(もの)に注目するかで計上の仕方が異なるのが難しいところです。今回注目しているのはCF計算書であることを踏まえると、在庫がないと商売が成り立たないのはもちろんですが、在庫は抱えれば抱えるほど管理費用も掛かるので、棚卸資産は少ないほうがいいようです。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュフロー(以下投資CF)は、固定資産の購入など、将来企業が利益を得るために行った活動にかかった現金のことです。そのため投資CFはマイナスになるのが正常です。
やはり、投資CFはマイナスになっています。「出資金の払込(-103,783千円)」や「差入保証金の差入(-25,435千円)」による手元の現金減少によるものです。
ちなみに差入保証金とは、契約の担保として債権者に差し入れるお金のことで、営業保証金・建設協力金などが該当するようです。家を借りるときの敷金(礼金ではない)のようなもので、契約履行後は原則戻ってくるお金ですので、まさに投資活動のための支出と言えます。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュフロー(以下財務CF)は、事業に必要な資金をやりくりする活動のことで、融資を受けて資金調達すればプラス、逆に有利子負債を返済すればマイナスになります。そのため、財務CFはマイナスになったほうが健全です。
財務CFはマイナスになっています。これはある意味当然です。私たちが日々やりくりする家計に例えるなら、給料が足りないとき(営業CFがマイナス)には、学資や将来的に必要な家・車などの購入を控えて(投資CFを少額にして)貯金を取り崩したりします。貯金が無かったり、定期預金ですぐに現金化できない場合には、不要なものをメルカリに出したり渋々キャッシングをしてお金を作ります(財務CFをプラスにする)。今回は短期借入金によって現金を用意したことが伺えます。
今回紹介してきた3種のキャッシュフローと、決算期間以前の現金等(家計でいうところの貯金ですね)を足し合わせた結果が最終行の「現金及び現金同等物の中間期末残高(560,840千円)」になります。
今後の見通し
以前の中間決算書分析記事でも紹介しましたが、TSONは今年度東海地方以外に、関東地方の物件について案件組成を始めるようなので、短期的には赤字覚悟で勝負に出ているのかもしれません。
私自身はTSONに現在3件ほど投資していますので、当分は事業者分散のため投資予定はありません。運用中のファンドが順調に償還されることを願いつつ、新たな案件についても関心を持っておこうと思います。
TSON以外の事業者でも東海地方の物件に投資しやすいように、みらファンにも口座開設しようかなぁ…と思っています。
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